意外と使う場面がある?『同工異曲』という四字熟語を紹介

同工異曲』の読み方は「どうくいきょく」。

早い話が「同音異義」の逆バージョンみたいな四字熟語です笑

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四字熟語『同工異曲』の意味

詩や文章を作る手際が同じで、しかも作品の趣が違うこと。
転じて、表面は違うようで内容は同じ意に用いる。

同工」という語は「細工が同じ」という意味です。ここから「同じ巧さ」のことをいいます。
異曲」はそのまま「演奏する曲が異なること」です。

これが合わさることによって、
「音楽を演奏する手際は一緒だが、演奏された歌曲の味わいや趣が異なること」が字面通りの本来の意味になるのです。
ここから上記のような「詩や文章を~」という意味が生まれました。

また、「同工異曲」は「異曲同工」ともいうそうです。

意味や由来はこちらの本を参考にしています。

四字熟語『同工異曲』の由来

出典は宋の黄堅(こうけん)による『古文真宝(こぶんしんぽう)』より。
ちなみにこの書は、室町時代に渡来して江戸時代に一般教養書となっています。
(意外と聞いたことのある名前が出てくるかも?)

唐の文筆家・詩人の韓愈(かんゆ)が「進学解」という文章を作って、学生から先生は学殖がありながらなぜ登用されないか、と問われたのに対して弁解した。
つまり彼の不満を託した文である。
文中で、大学の先生(韓愈自身)は、文章の真の味わいを知り、そのような文を作り、古くは『書経』などにある含蓄があって深い味わいの文章から、
『春秋左氏伝(さしでん)』や『易経(えききょう)』の文章、さらには『荘子』や屈原の文章、また『史記』や漢の司馬相如(しばそうじょ)の文まで、
それぞれ文の趣は異なっても、みな同様に上手な、たとえば曲は違っても、同じく巧みな音楽のような、それらの詩文にまで手本としていられる、という。
まとめて、「先生の文に於ける、其の中を閎(おお)いにして、其の外を肆(ほしいまま)にすと謂ふべし」と、自身の作品を、思想内容が広く大きく、表現は存分に才能を駆使している、と言っている。
この文章が時の執政に認められて官が昇進したといわれる。

なんだか小難しいこと言っていて何だこれ?という感じですが、書いてある文章の通りそのまま引用しています笑

要するに「まとめて~」以降を読むと、色んな大作家の例を上げて、
書経とか詩文とかまったく違うジャンルの文章でも、作品の趣が異なるだけで文章を作る手際は手本にすることができる、私は違うジャンルからも学べるんだよ、と言っているのでしょうね。

「其の中」と言っているのが、文章の内容。
「其の外」が文章の外、表現のことでしょう。

「其の外」を肆(自分のしたいようにすること)にするわけですから、文章の手順など同工異曲の作品群から学んだ挙げ句、自分流で表現されているということではないでしょうか。

今回は出典が難しいですね~笑

室生犀星と久保田万太郎

江戸時代には一般教養書になっていたと書きましたが、そのせいなのかやっぱり文豪なんかは日常的にこの言葉を使っていたような気がします。

芥川龍之介の『田端人』という日記の1ページみたいなとても私的で短い作品(?)があるのですが、この中では室生犀星と久保田万太郎が同工異曲にされています笑
ちなみに『田端人』は、芥川が田端の師友とも呼べる人々を紹介する話です。

室生犀星 これは何度も書いたことあれば、今更言を加へずともよし。只僕を僕とも思はずして、「ほら、芥川龍之介、もう好い加減に猿股をはきかへなさい」とか、「そのステッキはよしなさい」とか、入らざる世話を焼く男は余り外ほかにはあらざらん乎。但し僕をその小言の前に降参するものと思ふべからず。僕には室生の苦手なる議論を吹つかける妙計あり。
久保田万太郎 これも多言を加ふるを待たず。やはり僕が議論を吹つかければ、忽ち敬して遠ざくる所は室生と同工異曲なり。なほ次手に吹聴すれば、久保田君は酒客なれども、(室生を呼ぶ時は呼び捨てにすれども、久保田君は未だに呼び捨てに出来ず。)海鼠腸を食はず。からすみを食はず、況や烏賊いかの黒作り(これは僕も四五日前に始めて食ひしものなれども)を食はず。酒客たらざる僕よりも味覚の進歩せざるは気の毒なり。

この文豪同士の関係が垣間見える文章ってなんだかいいですよね~。
と思うのは僕だけでしょうか…?笑

「ほら、芥川龍之介、もう好い加減に猿股をはきかへなさい」って室生犀星が言っていると思うと面白くないですか?
それに対して芥川の方はこの野郎と思ってて「僕をその小言の前に降参するものと思ふべからず。僕には室生の苦手なる議論を吹つかける妙計あり」ですよ。
子供かよ!って思っちゃうんですけど、芥川流の冗談というか、これ絶対狙って書いてるよな~と。

ちなみに室生犀星の愛猫はジイノです。
詩人であり小説家でもあります。

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの

いい詩ですよね。

こちらからです。

と、話がだいぶそれてしまいましたが、なんでしたっけ…。

あ、そう。同工異曲でした。
芥川先生のぼやきを例文に覚えると、覚えやすいかもしれません笑