小説の例文で語彙力をつけよう!『名探偵に薔薇を』篇

日本で生活する以上、日本語をいくら知っていても損はありません。

語彙力をつけて受験や漢検に活かす人もいるでしょう。
しかし勉強目的ではなくても、たとえば、語彙力がなければ読書をするときに困ることになります。

特に難語と言われる一発変換できない言葉が出てきた時は、検索するのですら面倒…。

というわけで、難語に遭遇してしまう前に、難語の登場する小説から例文を抜き出して覚えてしまおう!という企画です。

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今回の本『名探偵に薔薇を』

今回の本はこちら。

城平京『名探偵に薔薇を』。
漫画『スパイラル ~推理の絆~』の原作者でもある城平京のデビュー作です。

今回はこちらから抜粋してみます。
ミステリなので初回から結構エグい単語も出てきたりしますが…笑

ネタバレはしないので、本を読む前の予習にもどうぞ。

『名探偵に薔薇を』に登場する語彙(単語)

轢断(れきだん)

意味:列車などが、ひいて切断すること。

木の葉はいつか風に巻かれ、レールの上で轢断されていた。(25p)

瑕瑾(かきん)

意味:きずのこと。また、欠点や短所、恥や恥辱。

『小人地獄』のもたらす死はさながら寿命を司る蝋燭の吹き消えるがごとし。
外気が摂氏四〇度を超え、また零下一〇度を下回ろうとも『小人地獄』に変質なし。酸化にもよく抗じ、以てその薬効に風化なしといえる。
ただ、瑕瑾わずかにあり、致死量の二十倍を境に非常な苦みを生じ、高濃度にては舌を焼かんばかり、嚥下もかなわず。(45p)

陶冶(とうや)

意味1:陶器や鋳物を作ること。
意味2:生まれつきの性質や、才能を鍛え練り上げたり、形成したりすること。

恵子は、私も小さな頃は鈴花みたいにはかなげで可憐だったのよ、と笑った。よほど三橋が間の抜けた顔をしたのか、さらに笑って、環境が人間を陶冶するということね、と付け足した。
獅子と子羊ほど違いのある性格が、どんな環境にあれば陶冶されるのかと首をひねらざるを得なかった。(49p)

黙契(もっけい)

意味:暗黙の了解、暗黙の契約。言葉なくして合意がなりたつこと、またその合意。

父の小屋に行かなくなってから、母との間で父のことを話題にすることはありませんでした。それは黙契になっていたのでしょう。しかし私はこれを破り、母に尋ねたのです。(67p)

楔(くさび)

意味:堅い木材や金属で作られたV字形や三角形の道具。突起部分を突き立て、物を割ったり、つなぎ合わせたものが離れないように補強するのに使ったりする物もある。

電話はいわば宣戦布告だった。表面だけとはいえ落ち着きを取り戻した藤田家に、焦燥をもたらすだった。(98p)

慣用句:楔を打ち込む(敵勢力を二分する/親しい間柄の邪魔をする)

狡猾(こうかつ)

意味:ずる賢いこと。ずる賢いさま。

三橋はこの男の狡猾さに怒りを覚えた。弱いところを知り尽くし、真綿で締めるがごとく迫ってくる。(108p)

奸智(かんち)

意味:悪知恵。ずる賢い知恵。邪悪な知恵。

この奸智の迷宮を攻略する糸玉は、ありやなしや。(113p)

慣用句:奸智に長けた(悪知恵が働く)

感得(かんとく)

意味1:道徳や真理などの奥深さを感じ悟ること。
意味2:信心が神や仏に通じて、大願成就すること。
意味3:思いがけず手に入ること。

ベールのほころび。もしくは彫刻の削り屑。犯罪を破る者は誰であれ、それらを感得せねばならない。名探偵とはその感度の最も優れた者だと、三橋は聞いたことがある。そして感得した瞬間にベールの向こうにあるものを、彫られた像の姿を、頭の中に描くことができる。(129p)

恬淡(てんたん)

意味:あっさりしていて、名誉や利益などに執着がないこと。

電話の相手は田畑刑事だった。恬淡とした声で、特に悪い知らせのようでもない。(140p)

剥落(はくらく)

意味:表面が薄い膜のようにはがれ落ちてしまうこと。

鶴田文治の仮面は亀裂から剥落に至るしかない。(150p)

深閑(しんかん)

意味:物音一つなく静まりかえっている様子。

深閑とした夜の中、三橋はやがてため息をついた。(167p)

宿業(しゅくごう)

意味:前世や前々世などの行いが、現世に良い結果・悪い結果問わず影響をもたらすこと。現世に現れる報い。

瀬川みゆきは、いわば名探偵という宿業の下にあるのだと思う。でなければその感度、事件への遭遇数には説明がつくまい。(167p)

つまびらか

意味:詳しく、事細かであること。(つまびらかにする=詳細を明らかにする)

三十数年前に武林善造という男によって製造されたことがわかってはいるが、その製法や成分、作用機序さえつまびらかではない。(176p)

嫋々(じょうじょう)

意味1:風がそよそよと吹く様子。
意味2:なよなよとした様子。しなやかな様子。
意味3:細く長い音声が、余韻を残すように尾を引いて響くさま。

三橋がブランコから立ち上がる。鎖が発した軋みは嫋々と消えていった。(276p)

懦弱(だじゃく)

意味1:いくじなし。だらけていること。
意味2:勢力や体力など、鍛えられず弱々しいこと。

因果や運命に転嫁して、自分の意志と努力を放棄した懦弱な者にどうして――。(306p)




『名探偵に薔薇を』に登場する語彙(熟語)

鉦や太鼓で探す(かねやたいこでさがす)

意味:(迷子を鉦や太鼓を鳴らして探したところから)大騒ぎをしながら大勢で探し回ること。鉦太鼓で探すともいう。

「本当だよ。嘘は言わない。恵子は君が家庭教師にと紹介された時から気に入っていた。ここだけの話、私は鈴花に男性の家庭教師というのはやっぱり無理なんじゃないかと気を揉んだんだがね、あれは君ほどの適任者はいないとからりと言ったよ。鉦や太鼓で探しても君ほどできた男性は見つからない、きっと鈴花のためになる人だと。恵子は本当に正しかった」(61p)

真綿で首を絞める(まわたでくびをしめる)

意味:じわじわと痛めつけたり、遠回しに責めていくこと。(柔らかいが、引っ張っても簡単には千切れないことから)

三橋はこの男の狡猾さに怒りを覚えた。弱いところを知り尽くし、真綿で締めるがごとく迫ってくる。(108p)

乾坤一擲(けんこんいってき)

意味:運を天まかせにして、のるかそるかの大勝負をすること(天下をかけてただ一度サイコロを投げることから。「乾」が天、「坤」が地、「一擲」が一度投げること)

三橋は思考を巡らす。鶴田を凌ぐ道はないのか。この取引を壊す乾坤の一擲は。(109p)

木で鼻をくくる(きではなをくくる)

意味:ひどく無愛想な様。素っ気ない。冷淡な。「木で鼻をかむ」ともいう。(元々は「木で鼻をこくる」こくる=こする。鼻をかんだり拭いたりするときの表情が無愛想に見えることから)

特に社会保障に興味があるようでもなく、熱心に勉強しているでもなく、教員からは、傷はないが木で鼻をくくったような答案を出す、と敬遠されていた。(121p)

砂上の楼閣(さじょうのろうかく)

意味:一見すると立派だが、基礎がもろいため長く維持できない物事のたとえ。また、実現不可能なことのたとえ。(机上の空論とは違うことに注意。)

「この犯罪、所詮砂上の楼閣にすぎない」

作用機序(さようきじょ)

意味:薬物が生体に対して働くメカニズムや仕組みのこと。薬理学用語。

三十数年前に武林善造という男によって製造されたことがわかってはいるが、その製法や成分、作用機序さえつまびらかではない。(176p)

あとがき

いったい誰が得するのか(僕です)というような記事でした。

しかしこれかなり時間がかかるので、そう頻繁には書けないシリーズになってしまいそうですね。
コスパも悪い!

一方で言葉の勉強は将来のためにもなるし楽しいしで、時間があれば積極的にやっていきたいところ。
まあまず語彙を選定する時点で相当時間がかかってしまうのですが笑

というわけで、小説の例文で語彙力をつけるシリーズの第一弾でした。

第一弾から妖しげなミステリでしたね。
難語といえばどの本かな~と本棚を探して第一に目に入ったのが『名探偵に薔薇を』だったのです。
高校生くらいのときに付箋貼りながら読んでいたような気がします。(付箋貼ってあって助かりました)

円城塔と迷ったのですが、下手すれば全ページから難語を抜き出さなきゃいけない可能性もあったので、とりあえず第一弾にするのはやめておきました。
そのうち扱うかもしれません。

あとはやっぱり文豪かな…。
夏目漱石だと造語も多いですからね。簡単⇒単簡とか。
でもそういうのを扱うのも面白そうなので、候補には上がってきます。

こんな記事にもちょっとは需要があるといいなーと思いつつ、これからも更新してきますね。