【小説感想】『未来の見えない僕たちにニーチェは「あなたの人生を愛せ」と言った。』

ニーチェが下町のシェアハウスにやってきた!?

「もし、ニーチェが下町のシェアハウスにやってきたら」というキャッチコピーに惹かれて読んでみることにしました。

しかしこの本のタイトル…「ニーチェ」という情報以外に何もない!笑

小説なのか哲学書なのかビジネス書なのか自己啓発本なのかも分からない!

読んでみた僕が言いますけれど、たぶん、小説だと思います…。

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この長すぎるタイトルの本を紹介する

わりと投げやりなあらすじ

この本は群像劇です。
舞台は下町のシェアハウス。
「42歳の柳田彰夫が首を吊ろうとしたことからすべては始まる」という冒頭のメタ的な一文通り、これがきっかけになって物語は動き始めます。
自殺未遂をした彼のおかげで、大家の高嶋惣一は事情聴取をすることになりました。
そこで逮捕されかけていた白髭の外国人を見つけます。
なんと、それがニーチェ!めちゃくちゃ日本語が上手い!
高嶋がニーチェをシェアハウスに連れ込んだことで、シェアハウスでのユーモラスな日常が始まるのでした。

一応、小説の体を取ってはいるものの、物語を通してニーチェの考え方を教えようとしている雰囲気はすごく伝わってきました。

なので小説と言うべきなのか哲学書と言うべきなのかはたまた…みたいな不明の書です。
面白いのですが、分類できない。

しかもタイトルがこれなので、この本を売る人々の苦労が容易に想像できます。

個人的にはジャンル「ソフィーの世界」にカテゴライズしたいですね笑

一言で感想を書けと言われたら、
「ニーチェで『ソフィーの世界』をやろうとしていたのではないか」
ですね。

著者の白取春彦はどんな人?

『超訳 ニーチェの言葉』は有名になりました。

難解な哲学をシニカルに噛み砕いて分かりやすく面白く説明してくれることに定評がありますね。

ベルリン自由大学に留学経験があり、「哲学・宗教・文学」を学んでいたそうです。
著書の大半がそっち方面の本になっています。

この人にはもっと本書のようなスタイルで書いていってほしいなと個人的には思います。
登場人物は個性的だし、人物たちの掛け合いも面白い。
クスッとくるような描写もある。

ですが、勿体ないことにタイトルから中身がまったく想像できないんです。

この本をタイトルとディスプレイだけで売るには…相当広告費をかけなきゃいけない気がします笑

本書の感想・レビュー

本書を読めば「ニーチェ」マスターになれる!という代物ではありません。

下町のシェアハウスにニーチェを突っ込んだら、どんな化学反応が起こるだろうか?という実験的な小説だ表現する方がまだ近い。
その化学反応の試みは章ごとに存在していて、それぞれ明確にテーマが決まっているんですね。
各章のタイトルを引用してみましょう。

第一章 望みが叶わないのは、あなたが望んでいないせいだ――小金沢智絵は、結婚で幸せになれるのか
第二章 眺めるだけでは夢は現実にならない――家主・高嶋は、少年の頃の夢を成し遂げられるのか
第三章 自分の人生をなくさないために――お金持ちになりたい短大生茉奈は、人生を幸福にできるのか
第四章 人生は非合理でも理不尽でもない――MBAを目指す佐藤は、家族の不幸を乗り越えられるのか
第五章 蛇は脱皮しないと破滅する――ブラックバイト勤務の菊地は、誰かを恨むのをやめた
第六章 私たちには自分の夢を叶える責任がある――ニーチェの夢

僕はニーチェに詳しくはないので、「恐らく」という言い方しかできません。
恐らく章ごとにニーチェの哲学が噛み砕かれ、物語で分かりやすく伝わるようになっているのだと思います。

なのでニーチェと登場人物の問答のようなものは多いのですね。

「私は結婚できますでしょうか」
「できます。あなたが本当に望んでいるのなら」

というような問答があり、「望んでいるのにできないんです」という反論に、ニーチェなりの視点を与えてあげる。
これによって、登場人物たちは新しい視点で自分を見つめ直すことができ、それぞれ新しい人間になっていくというものです。

どちらかといえば「ニーチェの視点」にハッと気づかされるのを楽しむというよりは、人物とニーチェの掛け合いを楽しむ本かもしれません。

「で結局、マンナって何だったんですか? 虫とかですか?」
「惜しい。虫ではないですね。まあ当時から貧しい人々は大きめのイナゴを食用にしていましたけれどね」
「へええ、イナゴを食べるなんて長野の人みたい」

笑いました。

本書はこんな人におすすめ

・ニーチェが気になるけどまずは易しく面白く知ってみたい
・ニーチェが下町のシェアハウスに降臨する展開が気になる
・群像劇や人物たちの掛け合いが好き

本当は章ごとに描かれている「ニーチェの視点」をまとめたかったのですが、それをまとめてしまうと、この記事を読んだ人に僕の意図しない伝わり方で伝わってしまいそうだったのでやめました。

この本は机にどっしりと構えてペンを片手に読むような本ではないです。
あくまで主眼に置きたいのは「ニーチェの哲学」ではなく「下町に訪れたニーチェの物語の面白さ」だったので、「掛け合いが楽しいよ」とシンプルに紹介しておきます。

たぶん「下町のシェアハウス!?なんだそれ!?」と思って読み始めた人の期待は裏切りません。
が、「ニーチェの勉強をしよう!」と思って読み始める人にはちょっとおすすめできないかもしれないと言っておきます。

もちろん、上述したとおり、まずは物語で哲学の触りだけでも……という人は普通に楽しめるので読んでもいいと思いますよ。

サムネ出典