「漁夫の利」の本当の意味が結構面白かった話

いつものように故事成語の勉強がてら記事を書こうとしたのですが、「漁夫の利」という誰でも知っている故事成語の由来が結構面白かったので紹介してみます。

恐らくほとんどの人が高校の教科書で出会う言葉だと思います。

覚えてます?

なんか貝と鳥がお互いを食べようと争っていたら、通りかかった漁師が「ラッキー♪」って両方獲っちゃう話ですよね。

https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=20187

ところが今日読んだ本(『ここから生まれた故事成語』)の帯にこんなことが書いてありました。

漁夫の利は、賢者から王への平和のメッセージだった

なんだこのやさしさに包まれたならみたいな煽りは!(違う)

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「漁夫の利」の意味

『ここから生まれた故事成語』を引用してみます。

二人のものが争っている隙につけ込んで、なにも苦労しない第三者が利益を得ること。

知っての通りの意味ですね。

「漁夫の利」の由来

出典は『戦国策』燕策の故事から。

それでは、「漁夫の利は、賢者から王への平和のメッセージだった」とは、いったい?

肝心の部分を引用してみます。

弱肉強食の戦国時代、趙が燕を攻撃しようとしていた。
のちに合従策で知られる燕の遊説家蘇代は、趙の恵文王に会い、「蚌(からす貝)が殻を開けて日向ぼっこをしていた。そこに鷸(しぎ)が飛んできてその肉を啄んだ。貝は殻を閉じ、クチバシを挟んだ。鷸は『今日も明日も雨が降らなければ、死んだ蚌ができるぞ』というと、蚌は鷸に向かって『今日も明日もクチバシが外れなければ、餓えて死んだ鷸ができるぞ』と言って、譲らなかった。そこに漁師が通りかかり、苦労もせず蚌と鷸の両者を手に入れた」と例え話をして、「今、趙と燕とが荒そうならば、両国の人民は疲弊し、その隙に西方の強国である秦が、漁夫と同じように利益を得ることになるでしょう」と述べた。蘇代の話を聞いた恵文王は、燕を攻めることを止めた。
この事柄がのちに合従策を結ぶ契機となっている。

合従策とは、南北連合を作る中国戦国時代の外交政策のことですね。
秦に対抗するために南北の6国が同名を結んだんです。

まあ、連合を以てしても秦には敗れてるんですけどね。

で、実はこの本、引用した部分で終わっています。

「え、教科書の通りじゃん」

と、思いますよね。
僕も最初はそう思いました。

ですが、改めて「漁夫の利は、賢者から王への平和のメッセージだった」と念頭に置いて読んでみると、なるほどなあと感心しました。

「漁夫の利」を考えてみる

燕の蘇代って攻撃されようとしていた国側の頭が良くて弁舌に優れた人だったわけですよ。
恵文王は文字どおり王様です。

蘇代は「両国が争ってるうちに両方ぶっ殺しに来る国がきっとありますよ」って説得してるんですね。
恵文王も「確かに。それはまずいな」ってやめてるわけです。

これが漁夫の利の意味通りのストーリー。

でもちょっとこれおかしいと思いませんか。

貝vs鳥は1対1だからいいですけど、国同士の戦争ってそんな簡単なものじゃないですよね。
秦みたいな大きな国が横から入ってこようとするならすぐ分かるじゃないですか。

だって趙が攻撃する前に燕は攻撃されるの分かっちゃうくらいなんですよ?

故事に出てくる賢者って言葉の裏に深甚な意味を隠しているなんてことはよくありますよね。

そこで「漁夫の利は、賢者から王への平和のメッセージだった」という言葉の出番です。

蘇代は最もらしい理由をつけて「戦争なんてくだらないことやめましょうよ」って言ってたんじゃないですか?
戦争が当たり前の時代に、争いなんて無意味だと理解した賢者が、愚王を操ったのではないですか?

だから「漁夫の利は、賢者から王への平和のメッセージだった」なのだと。

賢者の企みがその後も上手くいったかはともかく、ですけどね。

煽りを入れた編集者が何を意図していたのかは分かりません。
なにせ書いてないのですから。

でもこんな考察ができるのはちょっと面白いなあと思って紹介させていただきました。

ちなみに合従策を行ったのは蘇秦です。

学校では蘇秦が兄、蘇代が弟と習いますね。
ちょっと詳しい先生なら史記と矛盾するから逆だという説もあると教えてくれるかもしれません。

参考までに。

サムネ出典